空気注入手法の実施例

 硫化水素発生のメカニズム

 汚水圧送管路における硫化水素問題を図1に示します。圧送管路内で汚水が嫌気的な状態になると、硫酸イオンが嫌気性細菌である硫酸塩還元細菌によって還元され、硫化物が生成します。圧送管路内で生成した硫化物は、管路末端のマンホールや着水井などの吐き出し部分で空気中に硫化水素として放散され、悪臭の原因となります。さらに、その周辺で好気性細菌である硫黄酸化細菌によって硫化水素から硫酸が生成され、コンクリート施設の腐食を引き起こします。
 ただし、圧送管路内は、通常満流状態であるため硫化水素が放散されることはなく、圧送管路自体への悪影響の心配はありません。

図1 汚水圧送管路における硫化水素生成のメカニズム

図1 汚水圧送管路における硫化水素生成のメカニズム


 硫化水素抑制対策の種類
 圧送管路における硫化水素抑制対策については種々の方法が提案されており、その代表的なものを図2に示します。これらの対策は、各々の管路の状況に応じて適切な方法を選択して導入すべきものです。ただし、汚水の性状や管路末端などの状況によっては必ずしも必要なわけではありません。

硫化水素抑制対策の種類

図2 硫化水素対策の例


 空気注入システムとは?
 汚水を長距離圧送した場合や管路内に長時間滞留した場合、空気が供給されないので、汚水の嫌気化により管内で硫化水素が発生して圧送管路末端で悪臭や腐食問題が生ずる場合があります。
 空気注入システムとは管路中に空気を注入し、汚水を好気化させることによって硫化水素の生成を抑制するものです。


 空気注入システムの概要
 空気注入システムは硫化水素抑制対策の中で管路内の酸素バランスを改善する方法の一つであり、その特徴は次の通りです。

   1. 簡便な設備で済み、取り扱いも簡単
   2. ランニングコストは、主にコンプレッサーの電気代である
   3. 汚水の性状をあまり変質させず、厳密な抑制は必要ではない
   4. 管路の圧力損失を検討しておく必要がある

空気注入システムの典型的な例
空気注入システムの典型的な例
コンプレッサー
コンプレッサー
空気注入点
空気注入点


 管路の概要
空気注入手法を採用した管路の概要は以下の通りである。(図3参照)
1.管径×管路長 :φ350mm × 3477m
2.管種 :ダクタイル鋳鉄管(内面モルタルライニング)
3.汚水の種類 :主に家庭排水
 


図3 管路の概要


 空気注入による硫化水素抑制効果
 空気注入開始前日、空気注入開始当日および空気注入開始1週間後の管路末端マンホール内での気相中硫化水素濃度測定結果を図4に示します。硫化水素濃度は、空気注入開始前日には最大で380ppm、空気注入開始当日の空気注入前には最大で500ppm以上と高濃度でした。それに対し、空気注入開始2時間後から硫化水素濃度は徐々に低下し、4.5時間後には20ppm以下となり、空気注入開始から短時間で硫化水素抑制効果が現れました。空気注入開始から1週間後の測定では、硫化水素濃度は最大で10ppmと空気注入前と比較して非常に低くなっており、ほとんど検出されませんでした。

空気注入による硫化水素抑制効果グラフ1
空気注入による硫化水素抑制効果グラフ2
空気注入による硫化水素抑制効果グラフ3
図4 圧送管路末端のマンホール内気相中硫化水素濃度の測定結果


 水理特性の調査結果
(1)満流時と空気注入時の比較
 満流時と空気注入時の比較を表1に示します。ポンプ吐出圧は、空気注入時には満流時と比較して5.9〜6.4m高くなっており、同時に下水流量は約25%低下しました。これは、空気を注入することで、管路での圧力損失が大きくなったためです。
 
表1 満流時と空気注入時の比較
ケース
空気注入量
m3/min
下水流量
m3/min
ポンプ吐出圧
m
1
なし(満流)
2.90
18.4
2
0.371
2.22
24.3
3
0.124
2.14
24.8
 
(2)管路内圧力の挙動
 図5に満流時および空気注入時における管路内圧力(図3の測定点S2)の挙動を示します。満流時には、ポンプ停止直後に急激な圧力の低下が生じ、その後変動を繰り返していました。一方、空気注入時のポンプ停止直後は穏やかな圧力低下を示し、満流時のような急激な圧力変動は見られませんでした。このように空気注入時にウォーターハンマー現象が生じなかった理由として、注入された空気がエアークッションとして働いたためと推測されます。
 
図5 管路内の圧力挙動
 
(3)管路内圧力の計算値と実測値の比較
 管路内圧力の計算値と実測値の比較結果を図6に示します。全ての測定点で計算値と実測値は比較的よく合っており、本管路では計算により圧力損失をほぼ正確に求められることが実証されました。
 
図6 管路内圧力の計算値と実測値の比較

↑画面TOPへもどる
Copyright (C) 2001 assouken All Rights Reserved.